まるで少女みたいに恋をする

毎日は優しい奇跡で溢れてる 一緒に奇跡を見つけませんか

寂しくて優しい夕暮れ

 

 

昨日

 

息子が家を出ていった

 

 

 

ひとり暮しするの

やっとね

ちょっと長くいすぎたよね

ううん

一回転勤になったのよ

三年前だったかなぁ

転勤先でいろいろあって

あの時は一週間で帰ってきたの

わたしが寂しさを感じる時間もなかったなぁ

でもね

そのあと

あの子

調子が悪くなって

会社に行けなくなったの

 

 

 

 

はじめて見た息子の挫折だった

 

 

 

 

わたしはどんなに働いてもいいから

あの子がまた笑ってくれさえすればいいから

一生わたしが支えることになってもいいから

 

息子と生きていこうと決めた

 

 

 

 

そして

 

 

冷たい雪が溶ける頃

 

息子は自分の力で

新しい仕事を探して働き始めた

 

 

まだ早いよ

無理しないでよ

 

しかめっ面しながらそう言うわたしに

 

大丈夫だから

 

ボソッと答えて

毎日ちゃんと仕事へ出かけた

 

 

わたしは ただ お弁当を作って

シャツを洗ってあげて

あんまり代わり映えしない夕食を作って

息子と暮らした

 

 

春が夏に

夏が秋に

 

息子はゲームをしたり

友達と出かけたり

いつのまにか息子の部屋から

笑い声が響くようになり

 

 

 

 

 

また冬が来て春になって三年

 

 

 

 

 

昨日

 

 

 

 

 

 

 

息子は家を出ていった

 

 

 

 

 

前と違って

友達がいっぱい来て

楽しそうに引っ越しの荷物を運んで

じゃあね

って

出ていった

 

 

 

わたしの子育てはもうおしまい

あの子は今度こそ大丈夫

前より近いし

いつでも逢えるし

 

 

そう思っていたはずなのに

 

 

 

夕暮れになって

ご飯仕度しようとして

 

 

息子は帰ってこないんだ と気づく

 

それならお昼ごはんの残りでいいや

 

 

窓辺に座ってぼんやりぼんやり

外を眺める

 

 

涼しい風がわたしの髪を揺らして

 

空が

 

綺麗

 

 

 

こんな時間に

こんな風に

外を眺めることなんてなかった

 

いつも

息子のご飯仕度で

野菜を切ったりお肉を焼いたり

 

 

こんな風に

風を感じることなんて

家にいる時はなかったのに

 

 

 

 

これからずうっと

 

夕暮れを見つめていいんだ

 

 

 

 

 

寂しいけれど

 

 

優しい夕暮れ

 

 

一人ぽっちなのに

 

 

あたたかい夕暮れ

 

 

 

息子は今日

 

 

 

何を食べるのかな…

 

 

 

 





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一緒に生きてくれて

 

 

ありがとう

 

 

 

 

離れても

 

きみのお母さんは

 

 

世界に

 

わたし一人です