僕だけのメリークリスマス
久しぶりにライブに行ったの
ギターの上手な友達に誘われて
仲間たちが何人かで歌うから
もし良かったらおいで
雪がチラチラ降る中を
すべらないように一歩一歩踏みしめながら
あぁ
今年も終わっていくなぁ
今日はクリスマスイブイブ
明日サンタさんは
わたしに何を持ってきてくれるのかしら
そんな事を考えながら
ライブが開かれるバーに着いた
おおー
久しぶりーーっ
三年前にはよく会っていた人達が
集まっている
ごめんね
ずっと忙しかったの
ごめんね
なかなか来られなくて
謝りながら
暖かいバーで飲む冷たいビールと
みんなの変わらない笑顔に
ホッとした
わたしが自分だけに集中していた三年間
仲間はここに集まって
変わらずギターを弾いていたのだろう
何かになろうともがいていた
わたし
何にもなれなくていいから
表現しつづけてきた仲間たち
それでいいんだよね
何かにならなくていいんだよね
今
自分が
本当に歌いたい曲を
ただ奏でること
それ以上に
素敵なことなんてないんだ
見たことのない男の人がステージに上がった
まだ幼そうに見える笑顔に似合わない
大きな手がギターをつまびいた
メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス
for me
知らない
この曲
長渕剛だよ
隣に座っていた友達が教えてくれた
メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス
for me
メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス
for me
彼の声が 胸に 響く
ずっとね
うつ だったんだよ
彼
だあれも訪ねてこない精神病棟に
バーのマスターが
何度もお見舞いに行ったんだって
退院してからも
マスターが何度も何度も電話をかけて
三年ぶりの
今夜のステージなんだよ
友達の話を聞きながら
いま歌っている彼の中にある絶望が
希望に変わっていくのを
わたしは見た
わたしが自分探し なんて
カッコつけ始めた頃
元気に歌っていた彼が
疲れきって入院して
またギターを弾けるようになるまでの
三年間
けっきょく
自分でいるしかない
と気がついただけのわたしの前で
この人は立ちあがり
またギターを握っている
そんな彼の歌を
じっと 聞いていた
メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス
そうだよ
僕だけのメリークリスマス
あなたは
あなただけの
わたしには
わたしだけの
素晴しさが あるんだ
いつの間にか
バーの中は大合唱
みんな声を張り上げて歌ってる
メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス
for me
メリークリスマス
メリークリスマス
メリークリスマス
for
me
メリークリスマス
どうぞ
あなただけの
クリスマスを