桜 咲く道
真夜中一時まで新橋でカラオケ
歌って踊って採点してまた歌った
朝起きられなくて
寝坊して
やっと 朝ごはん
お酒を飲んだ次の日に欠かせない
食後の梅干しとお茶
スッキリしたから出かけますか
今日は山手線に乗って池袋へ
そのあとまた電車に揺られて埼玉へ
向こうから手を振って走ってくる
15年ぶりに会う友達
真理ちゃーん
あー痩せたねー
可愛くなってるー
真理ちゃんは高校の演劇部の仲間
私よりずっと才能があった
彼女が芝居をやめて奥さんになって
才能なんて何にもないわたしが
芝居みたいな仕事を
ずっと続けてる不思議
子供達の成長した話や
旦那さんが大きな病気を克服した話
仕事の話
なぜか税金の話
笑ったり涙ぐんだりしながら
最後は
これからの生き方の話
もっともっと
手に入れたいものばかり
でも
本当にそうなのかな
いつも
ないものばかりを数えてる
癖がついてるだけじゃないのかな
私たち
こうして
卒業して35年たっても元気に会えて
37年だよ
真理ちゃんが笑う
あ
そーか
37年たっても元気に会えて
それだけでスゴイよね
痩せて綺麗になった真理ちゃんと
ちょっと太って健康的に見えるわたしと
いいんじゃない?
いい感じに年とったんじゃない?
あと10年たったら
私たちお金持ちになって
おばあさん劇団を立ち上げようね!
そんな冗談みたいな約束をして
ばいばい
またね
また
会おうね
駅まで送ってくれる車の中で
昔の話をいっぱいした
飲んでるからおいでー
ってよく電話くれたよね?
え?
わたしが真理ちゃんに?
もう電車ないから無理って言ったら
タクシーでおいでって
えー
ひどいね
覚えてない‼
で
タクシー代 わたしが出してあげたの?
ううん
きゃーっ
覚えてない
ごめんねー
わたしひどいヤツだね
大好きだったからさ
え?
わたし
大好きだったからさ
玲ちゃんのこと…
だからタクシーでも行ったんだよね
きっと…
わたし達は手を振って別れた
笑顔で手を振って別れた
真理ちゃんの車が小さく見えなくなっていく
池袋へ向かう混んだ電車の窓から
時々 桜が咲いてる景色がひろがる
真理ちゃん
ありがとね
わたしのことを大好きと
言ってくれる ひとがいる
足りないものはたくさんあるけど
それだけで
あったかくって
それだけで充分だった
いま
差し出された優しさを
まるごと受け取るだけで
充分 だった
東京の桜はもうすぐ散るけれど
わたしが帰る札幌の桜は
これから
いつか一緒に
東京の桜も札幌の桜も
一緒に
見ようね