千葉くん
わたしがよく行くコンビニは
しょっちゅうバイトさんが変わる
夜遅い時間になると
無愛想な店長さんが一人で働いてる
いらっしゃいませ
にも
ありがとうございました
にも
何にも愛情がない言い方が嫌いで
夜はなるべく行かないようにしてた
でも
いつからだろう
多分 桜が咲き始めた頃
お花見の後で
ふらっと真夜中にコンビニに
寄ってしまったら
いつも通り店長さんがいた
相変わらず無愛想
その隣に
千葉くんがいた
夜勤の新人さんが入ったんだな
嫌いな店長さんのレジを避けて
千葉くんのレジに向かう
もちろんその時はまだ名前なんて
見なかったんだけど
慣れない手つきで
ひとつひとつ丁寧に袋に入れて
お金を受けとると
大切そうにレジに閉まって
お釣りも1枚ずつ数えて
わたしにそっと渡してくれた
そっと渡してくれたのに
びっくりするくらいの大きな声で
ありがとうございましたーっ
とわたしに言った
それから
夜遅く帰った時も
普通にコンビニへ行くようになった
もう千葉くんがいるからね
あの店長さんのレジに
並ばなければいいからね
いつからだろう
店長さんは見かけなくなって
夜は千葉くんが一人で働いてる
相変わらず
ゆっくりとした手つきで
ひとつひとつ丁寧に袋に入れて
そっとお釣りを渡してくれる
そして
びっくりするくらいの大きな声で
ありがとうございましたーっ
と言ってくれる
千葉くんは慣れてきたようには
見えないけれど
一生懸命 働いている
一生懸命働いている
今日ティッシュペーパーがなくなって
遅い時間にコンビニへ行くと
やっぱり千葉くんがいてくれて
やっぱり丁寧にお釣りを渡してくれて
ティッシュペーパーに
コンビニのシールを張ったのに
袋に入れますか?なんて聞いてくれるから
千葉くん
千葉くん
ティッシュペーパーは
そのまま箱ごと持って帰るから大丈夫だよ
笑って
少し
すこし
ジーンとした・・・
一生懸命
働く姿は
不器用でも
こんなにあったかい
千葉くんがいてくれるなら
また買いに来るからね
そっとお釣り渡してね
わたしもこんな仕事がしたい
もてはやされなくても
有名にならなくてもいいから
丁寧に丁寧に
ひとりの人を大切にする
大きな声でありがとうを伝える
こんな仕事が
していけるよう
明日も頑張るよ
千葉くん
働くって
誰かを幸せにすることなんだ
がんばれ
昨日は今年初めての野球
すごく早く着いちゃった
試合までまだ一時間以上もあるの
まずビールビール
しばらく禁酒してたけど
やっぱりビールは美味しいなぁぁぁ
サラダと唐揚げとお弁当
ちょっと食べ過ぎだけど
美味しいね
楽しいね
あっ と言う間にビールが空になって
もう一度売店へ向かう途中
綺麗な夕焼けが見えた
あ
あれはいつだっただろう
夕焼けの中を毎日歩いてたね
わたし
あの頃は掛け持ちでいろんな事してて
愛犬のお散歩や息子のご飯仕度や
今よりずっと忙しかった
なのに
毎日毎日ウォーキングした
雨の日も風の日も
何かになりたくて
歩いていたら何かになれる気がして
大好きな人がいて
歩くほどその人に近づける気がして
なんで思い出しちゃったのかな
そんな日のこと
いつのまにか歩かなくなって
大好きな人も違う人に変わった
息子は大人になって
愛犬は空へ還って
わたしはもう誰の世話もしなくなった
なのに歩かなくなっちゃった
時間はいっぱいあるのに・・・
お代わりのビールをかかえながら
席にもどると
選手達がウォーミングアップで
飛んだり走ったりしていた
なんてしなやかで
なんて綺麗なんだろう
また
歩きだそうと決めた
何かになるために歩くんじゃなくて
今の自分のまんまで歩きたいと思った
足りないところも
ほめてあげたいところも
みんな
わたし
わたしのままで歩こう
試合開始まであと少し
がんばれ
選手に言ってる振りをして
わたしはわたしに呟いた
がんばれ
桜 咲く道 - まるで少女みたいに恋をする
このブログを書いた時
真理ちゃんは
元気でした
一緒に女優さんを目指していた
わたしたちは
一緒にあきらめて
彼女は東京で優しい旦那さまと結婚して
わたしは故郷で好きな仕事について
お互い
第一希望は叶わなかったけれど
第二希望は叶ったよねー
なんて笑いながら
離れた町で普通にふつうに生きていた
彼女から連絡があったのは
まだ雪が降る二月
脳に大きな腫瘍ができてて手術するの
信じられなかった
そんな大変なことが
わたしの大切な友達に起きるなんて
なんで
なんで
なんで
なんで
わたしよりずっと真面目に誠実に生きている
彼女がなんで
そんな病気になるの?
でもその電話をもらった時は
わたしも体調を崩して入院してて
なんにもしてあげられなかった
彼女の優しい旦那様から
手術の経過をメールで知らされて
成功したよっ
と元気な写真も送られてきて
ホッとしたのに
腫瘍が取りきれていないんだ
この病気と一生つきあっていくんだって
でもうまく薬が効いたら
80歳まで生きられるんだよ
治らない病気と向き合いながら
彼女からの明るいメールが届いた三月
わたし
逢いにいくよ・・・
そして今日
わたしは列車に乗っている
葉桜が残っている東京の景色を眺めながら
列車は彼女が住む街へ向かう
出逢ったのは高校一年生
あのとき真理ちゃん
ローリングストーンズが大好きで
追っかけの時演劇部の稽古さぼって
先輩にものすごく怒られてたよね
わたしはわたしで遊び歩いて
一度部活をやめたのに
声優になるんだって言い出して
急に再入部して
みんなに呆れられたよね
高校卒業して
一緒に暮らして
別々に暮らすようになっても
いっつも仲良しで
泣いたり怒ったり忙しいわたしを
いつも慰めたり励ましたり
時々ため息つかれたり
真理ちゃん
もうすぐ着くよ
わたしたち
もういつ終わっても不思議じゃないくらい
年をかさねた
でも
いつまでも生きててもいいくらい
まだまだやりたいことがある
病気なんて
病気なんかに
あなたは負けない
真理ちゃんの大好きな白い恋人をかかえて
駅に降りたわたしの肩に
桜の花びらが
舞い降りた
わたしの街に
あなたが生まれた街に
これから桜は
満開になる
なんにもなくてもいいでしょ
朝起きて
小雨の中買い物へ行った
もう春
まだ冬
の境い目の街を歩く
なんでもある街の中を
なんにもないわたしが歩く
なんにもない
なんにもない
それって
恥ずかしいのかな
パンと
キャベツ
牛乳
特売のシュークリーム
千円札を出して
いくつかの小銭をもらって
なんにもないわたしが
買い物の袋を下げて街を歩く
わたしにも雨は降る
わたしにも空は拡がる
わたしにも風は寄り添う
わたしにも・・・
あなたは何だってあるじゃない
そう見える友達も
なんにもないかもしれないよ
わたしには何にもない
そう思ってる自分にも
なんでもあるかもしれないよ
なんにもなくてもいい
なんでもあってもいい
そんなことは
ちっぽけなこと
大切なのは
なんにもないと
感じているこの瞬間さえ
わたしは生きてるってこと
パンを焼いて
牛乳を温めて
美味しい朝ごはんを食べられるってこと
今日手に入れたもの
パン
キャベツ
牛乳
特売のシュークリーム
そして
今日のわたしの いのち
なんにもなくても
ほら
世界はここに在るでしょ
今日はおとなしくしていましょう
やっと
風邪が治った週末
あなたと出かけた
まだお酒も飲めないし
まだ本調子じゃないけれど
いっぱい笑って
いっぱい喋って
あなたもご機嫌だった
でも
やっぱり
疲れた
遅くに家に帰って
一日ストーブがついていなかった部屋の
冷たい空気に震えながら眠りについた
眼が覚めたら
青空で
暖かくて
まるで春みたいな陽気
昨日までの疲れが嘘みたいに消えていたから
思わずあなたに電話した
今日も
どこか行く?
ワクワクした
ドキドキした
見たかった映画
行きたかったあの場所
今日のスケジュールを考えて
急にときめいた
でも
あなたからの返事は
今日はおとなしくしてましょ
うん
そうだよね
ううん
そうじゃない
どこかへ行きたかったわけじゃない
あなたと
一緒にいたかっただけ
あなたがわたしを気づかってくれてるのは
わかってるけど
しーんと
寂しい・・・
夕方
あなたからラインがきた
調子どう?
夜ごはんくらい食べに行く?
ほんの一瞬嬉しかったけれど
すぐに返事を返した
今日はおとなしくしてる
返信した途端涙が溢れた
おとなしくしてるよ
おとなしくしてたいよ
でも
寂しいよ
拗ねた涙が
季節外れの雨みたいに
はらはらとこぼれ落ちていく
寂しさを感じられるほど
わたし
元気になってきたのね
2019~新年のご挨拶~
寂しい時は
そっと寂しさと寄り添えばいい
悲しい時は
しっかり
その悲しみにひたればいい
悔しい時は
悔しい自分を認めればいい
怒りが湧いた時は
怒りの炎をちゃんと燃やしつくせばいい
不安な時は
不安の中に飛び込めばいい
そして
いま
心地好いことで遊べばいい
子供みたいに
夢中になって
あとは
全部
任せればいい
宇宙は
奇跡をあっ!という間に起こせるのだから
宇宙は
あなたを
誰よりも愛しているのだから
お正月の空
元旦から白い息を吐きながら
空を見上げた時に
この一年は
今までのわたしではいられないな
と
胸がきゅーっんとなりました
それは
嬉しいような
切ないような
少し怖いような
そんな気持ちでした
その日から
どんなに楽しい事があっても
わたしはつまらなくなりました
今までワクワクした事が
まるで色褪せてどうでも良くなりました
体が重たくて
心の中には押し込めてきた感情が
溢れだすようになりました
苦しい
苦しい
外に何かがあるのではなくて
中に苦しさのタネがあるのです
わたしは初めて
愛されないことも
お金が足りないことも
病気も
人間関係も
すべての悩みは
中にあることを確信しました
だったら
中を
綺麗にすればいいよね
わたしの中は
グチャグチャのドロドロです
目を瞑っていては綺麗にしてあげられない
とても辛いお掃除が始まりました
見て
見つめて
寄り添って
感じきっていく
今年が始まってから一週間
それだけを繰り返しました
不思議ね
わたしが怒りを感じてる時は
怒ってる人がわたしの横に現れます
わたしが寂しくてたまらない時は
ひとりなんだ
と感じさせる時間が
わたしの周りを包みます
そんな風に
自分の感情と現実をシンクロさせながら
少しずつ少しずつ
わたしの中は綺麗になっていく
不安でジタバタしていた心は
しーん
と
静かになっていく
そしたら
空は青くて
風は透き通って
世界は急に美しくなった
悩んでることはたくさんあるのに
そんなのどうでも良くて
ただ
ただ
今が愛しい
自分の気持ちをひとつも否定しないで
まるごと
まるごと受け入れる
わたしの一年が 始まりました
あけましておめでとうございます
今年も
このブログに込めたわたしの想いが
あなたの心に届きますように
寂しくなってもいい理由
大阪から帰ってくる友達のために
その日はあのお店に集まろうね
って約束していたの
なのに突然の大雪
友達が乗った飛行機は千歳じゃなくて
東京へ降りた
楽しい再会の夜は
突然一人ぽっちの夜に変わった
仕方ないよね
飛行機飛べなかったんだから
昨日作ったカレーを温めて
パンを焼いて
テレビをつけて
冷たいビールの缶を開けたけど
あんまり美味しくない
疲れてるのかな
テレビもつまんないし
音楽も聞きたい気分じゃないし
録画していたドラマを見始めたら
その間夢中になったけど
終わってしまったら急に空しくなった
カレーのお皿洗うのも
めんどくさいな
飲みかけのビールも
もういらない
もし雪が降らなかったら
今頃一緒に笑っていたのかな
大阪の話で盛り上がって
酔っぱらったわたしは気が大きくなって
大阪へ遊びに行く予定まで
決めたかもしれないね
カーテンを開けると
まだ
雪が降っていた
ねぇ
どうしてこんな日にきみは降るのかな
だって
寂しさを感じられたでしょ
雪がそう答えた気がした
たまには寂しくないと
みんなありがとうを忘れちゃう
毎日幸せばかりだったら
幸せってことを忘れちゃう
だから
たまには
寂しくてもいいんだ
カーテンをゆっくり閉めて
あたたかいお茶を飲んだら
そろそろ眠ろう
そうね
そうね
たまには
寂しくたっていいんだ
今度は
いつ逢えるかな
今日
寂しくなった分だけ
きっとその日は
あったかくなる