夕暮れブランコ
お昼寝から目が覚めたら
なんだか息苦しくて
部屋の中の空気がうまく吸えない
あれ
あれに似てる
酸素が少なくなった水槽で
口だけ水の上に出してパクパクしている金魚
あわてて前髪をピンで止めて
ジーンズをはいて外へ飛び出した
会社帰りの人にさからって
ゆっくり歩く
深呼吸しながら
夕暮れが始まって
向こうの曇り空もほんのり赤くなる
やっぱり
ちゃんと歩けない
公園のベンチに腰かけて
ふと横を見ると
ブランコ
だあれもいない
ブランコは待っているのに
そっ と腰かけて
ゆらゆら
揺れてみた
一回
二回
小さく揺れるブランコ
地面を蹴って
三回
四回
ちっぽけなわたしも
ブランコに乗ったら空まで届きそう
緩い風が強くなって体に当たる
ノースリーブの肩が冷たくて
反対に頬が赤くなる
小さい頃は毎日乗っていたブランコ
なんにも考えず楽しくて
思いっきり漕いで鳥になった
思いっきり漕いで光になった
あの頃
空気
美味しかったなぁ
やっと静まった息苦しさにホッとしながら
ブランコから見える街を見渡してみる
それぞれの家に灯りがともり
開け放たれた窓から子供の笑い声が聞こえる
これからみんなで夕ごはんかな
みんなみんな
優しい夜を過ごせますように
さぁ
帰ろう
わたしだけが待ってる家へ
ただいま
おかえり