嘘つき
寂しくない
なんて
嘘つき
ひとりでいい
なんて
嘘つき
だけど
ひとりは楽ちん
いつまでも空を眺めていられる
いまでも風に吹かれていられる
ひとりも
嫌
誰かと一緒
も嫌
わたしは自由でわがままで
どこにでも行けて
どこにも行かなくていい
そんなわたしを放っておきながら
愛せるほど
あなたの心
広いのかしら
この
秋の空のように
自分だけ の夏
冷たいラテが美味しかった朝
今年は何回あったかしら
また
温かいラテが恋しくなったね
暑いのは苦手
暑いのは嫌い
そう繰り返しながら
暑さがおさまると
ちょっぴり寂しいのは何故?
それでもやっぱり
今年は暑すぎて
窓から入ってくる風の涼しさに
ホッとしてる
夏が
終わっていく
車の中から写したシラルトロ湖
空の青
水の青
そして緑
勇気を出して入った
はじめての食堂
優しいおかみさん
夏の味
簡単だけど
お料理もちゃんと作って
ひとりでホテルのバーにも
行ったっけ
どこに行っても
マスクをして
必要なことしか伝えないから
わたしはとても無口になった
そのぶん
自分とたくさんお喋りした
ねぇ
ここはどーお?
これは好き?
これはちょっと嫌かな
あそこに行こう
うん満足
幸せだねぇ
わたしはわたしに話しかけて
わたしはわたしにちゃんと
答えてあげる
こんなの
初めて
いつもわたしの周りには
たくさんの友達がいてくれて
何でも話せた聞いてくれた
だけど
その時の言葉は
本当に
自分の言葉だったのかしら
いまは
誰も答えてくれない
だから急いで話す必要もない
ノリで余計な事言っちゃうこともないし
わたしは正直でいつも本音だ
もう
そんな自分で生きていく時が
来たのでしょう
マスクをするのは
お世辞を言わないためよ
人と触れあっちゃいけないのは
自分を抱き締めるためよ
どこもお店が開いてないのは
自分の居場所に帰るためよ
そんなこと考えてる間に
夏は終わろうとしている
寂しい夏
遠くへは行けなかった夏
だけど
わたしがわたしを
いちばん
大切にした夏
満たされる方向
去年のゴールデンウイークは
誰も街にいなかった
仕事もほとんどなくなって
デパートもお店も閉まってて
まるで別の世界に来てしまったような
そんな気持ちの春
静かで
透明な
春
それでも桜は満開で
見る人がいてもいなくても
一生懸命咲いていこう
なんて
思ったよね わたし
あれから一年
去年よりひどい状態になっても
街は人で溢れてる
通勤電車は満員だし
開いてるお店を見つけるのも難しくない
大声で喋る大阪弁の観光客もいるし
それを
チッ
と思ってしまう自分もいる
今年も
桜は満開で
だけど
わたしはそれを見ても
一生懸命咲いていこう
なんて
思わなかったんだ
思えなかったんだ
みんな不安になって
みんなイライラしてきて
みんな
いつまで続くのかな、って疲れてる
誰かのせいにしたくて
文句を言うのも悪くないけど
文句を言いながらお酒を飲む場所もない
あ
いま
欠乏感注意報・・・
こんなときは深呼吸して
心があったかくなることを考える
わたしには
大切な人がいる
大好きな人がいる
今日も元気に朝を迎えられて
淹れたての珈琲は美味しい
空は真っ青に晴れてて
お洗濯したシーツを干すと気持ちいい
昨日は息子から
優しいラインが送られてきた
録画していたドラマを見たら
松田龍平は相変わらず素敵だった
そうそう
来週から始まる朝ドラが
すっごく楽しみだし
今年の冬に公開するあの映画を
見るまでは元気でいなくちゃ
さ来年の大河の松潤を見るまで
元気でいなくちゃ
来月生まれる赤ちゃんが
一緒にお酒を飲める日まで
元気で
いなくちゃ
世界がどんなに変わっても
わたしの幸せはここにちゃんと在る
大切な
大好きな人たちに囲まれて
桜はそろそろ散っていくけれど
やっぱり今年も
一生懸命咲こう
見てくれる人は
誰もいなくても
満たされる方向へ
咲いていこう
上がらない肩 上がる気持ち
左の肩が上がらなくなったのは
三年前・・・
冬の始めにスリップした車と
わたしの車がぶつかって
軽いムチウチになったのね
ぶつかってきた人は何度も謝って
ちゃんと病院に通ってくださいって
言ったから
毎日毎日整形外科に通った
ジャニーズみたいな若い看護士さんが
わたしの担当になった
あのねぇ
首よりも左の肩がずっと痛いの
え?事故で肩も打ちましたか?
ううん
その前から上に上がらない
あ、
それ四十肩っすよ
一緒に笑ったけど
五十肩だよなぁ
四十歳なんてとっくに過ぎてるし…
そう思った
冗談も言えるようになった頃
首の治療が終わって
左の肩もいつの間にか痛みがなくなって
看護士さんとも
四十肩とも
わたしは さよならした
と
思ったのに
今年の雪どけあたりから
気がついたら
右肩が上がらない
痛みはどんどんひどくなって
肩から手首まで痛くなって
タオルも絞れない
夜も眠れない
左の四十肩よりずっとひどくて
あー
年をとったんだなぁ
鏡を見ると
なんだか目が優しくなってる
もっと目がキツかったよね
あ
瞼が下がってきてるんだわね
あー
年をとったんだなぁ…
でも
でもね
わたしは最近生きてることが
とても心地好いの
笑っても怒っても
躓いても転んでも
わたしはわたしらしく生きている
こんな風になれたのは
多分
ここ三年くらいなんだ
だから
肩が上がらなくても
上がる気持ち
小皺がふえた分
幸せも増える
体重が増えた分
きっと優しさも増えてる
なーんてね
年を重ねて
どんどん自分に甘くなってくけれど
それもいい
どれもいい
何でもいい
上がらない肩と
上がる気持ちを抱きしめて
アンバランスなわたしのバランスを
とりながら
ね
今日もとてもいい一日でした
幸せは
年令と
比例するのよ
きみの オムライス
お誕生日だから何がほしい?
って
きみに聞いたら
何にもいらん
って
ラインが返ってきた
じゃあご飯食べにおいで
って返事したら
行く行くって言ってくれたから
息子と
お嫁さんの
あ
もう娘だね
娘の
好きなもの作ろうと思って張り切った
しばらく自分のためにしか
お料理してなかったから
頭も手も動かないけど
朝からタンタントントン野菜を切って
段取り考えて
その合間にお掃除して
なのに
思ったように
出来なかったんだ
きみたちが来た時には
ジャンジャジャーン‼
びっくりするようなお料理が
並んでるはずだったのに
ハンバーグはまだフライパンの中
ピザは焼けてないし
サラダはレタスだけ
オムライスはやっと
ケチャップご飯を炒めてる段階
揚げてたフライドポテトを
うまいうまいって
食べてくれる二人に感謝しながら
ごめんねー
いまオムライスも出来るから
あ
グッチさんのオムライス?
え?
グッチさん?
あぁ
グッチ祐三さんのオムライスかぁ
それは
いつの頃かしら?
きみがまだ小学生くらいの時
グッチ祐三さんの料理番組があって
ご飯を玉子に混ぜて
オムレツみたいに焼き上げる
グッチさんのオムライスを見て
食べたいって言ったから
よしよし作ろうってわたしは思った
グッチさんのオムライスは
わたしにしてはすごくうまく出来て
グッチさんのレシピがもちろん
美味しいのだけど
きみはとっても喜んだ
あれから
何年たったのだろう…
覚えていたんだね
グッチさんのオムライス
わたしが作った
グッチさんのオムライス
なんだか泣きそうになりながら
グッチさんのオムライスを
もう一度作ろうと思った
炒めてあったケチャップご飯を
玉子4個に混ぜて
オムレツみたいに焼き上げる
あ
あぁ
なんか
うまくいかない
平野レミさんに助けてほしい
けっきょく
半分オムレツ半分ケチャップご飯みたいな
不恰好なオムライスが出来て
わたしはとても悲しくなった
久しぶりの息子夫婦とのご飯
お誕生日前夜祭なのに
なんでわたし
お料理下手くそなんだろうーーー
買ってあったケーキに蝋燭を灯して
HAPPYBIRTHDAYを歌って
恥ずかしがりながら
きみがローソクを吹き消して
おめでとう
一緒に暮らしていた頃は
お誕生日なんて
やったことなかったよね?
ごめんね
ごめんね
きみがどんなに恥ずかしがっても
ケーキくらい
一緒に食べれば良かった
良かったけど・・・
まぁいいか
こんなに幸せになってるんだから
きみも
わたしも
こんなに幸せになったんだから
次の日
きみからラインがきた
昨日は美味しかったです
ありがとう
ありがとう
は
こっちの台詞です
何年も前に一度だけ作った
グッチさんのオムライス
美味しかった‼って
覚えていてくれたきみに
本当に
ありがとう
お誕生日おめでとう
もうすぐお父さんになる
きみが
素敵な一年を送れますように
一人立ちした日のこと
忘れないよ
孤独のグルメ
一月はまったりと始まって
このまま今年は流れていくのかな
と思ったら
急に忙しくなった
自粛してくださいって
いくら言われたって
仕事はします‼フリーランスですもの
マスクしながら喋るのは本当に苦しい
でも
仕事に夢中になると
苦しさなんて忘れてしまうの
わたしはいつも
息苦しさより
生きやすさにフォーカスするみたい
うん
うん
それは
良いところだよね
どんなに忙しくても
ちゃんと寝て
ちゃんと食べて
ちゃんとビール飲めば元気なわたしが
あまりに忙しくて睡眠時間が減った
ビールはプシュッと開けるけど
お料理する元気がなくて
この前なんて
冷蔵庫ガサガサあさったら
エンゼルパイが出てきたんだ
それをおつまみにして
ビールを飲んだら
思ったより
合う
合う
けど
なんだか
ダメだな
って思った
こんなの
ダメだよね・・・
なーんて毎日を送ってるうちに
忙しい日々は終わって
エンゼルパイとビールは合うって話を
笑いながらラインできる時間が
戻ってきた
わたしはまた
仕事しながら
お料理もできるし
出掛ける時間も戻ってきた
だけど
戻らないものがある
ソーシャルディスタンス
ひとりご飯にも慣れたけど
孤独のグルメを見すぎてるせいか
めちゃめちゃ感想を言っている
あー
この枝豆の茹で加減は最高です
とか
日帰り温泉のレストランで
こんなにジューシーなから揚げが
あるなんて大当たりっ
とか
プチトマトを豚肉で巻いて焼くなんて
考えた人は天才‼とか
餃子は人類の大発明‼とか
スープカレーの名前は
野菜もっこりカレーにすればいい
とか
カニを酢で食べるなんて
堪忍す・・・
とか
ひとりでブツブツ心の中で喋ってる
俺の食事に密はない
ってゴローさん言ってたけど
わたしの食事にも密はないよ
でもね
それでもね
作ってくれる人がいて
運んでくれる人がいて
お料理してくれる人がいて
開いてるお店があるからこそ
わたしも
孤独のグルメになれるんだ
まだまだ
自粛
でも頑張りましょう
エンゼルパイとビールで
過ごさなくてもいいのは
大変な中で頑張ってくれる
あなた達がいてくれるからです
今日もいっぱい感謝して
心からの
いただきます
とりあえず
ビールね
変わる季節
紅葉が本当に綺麗だった
それはついこの前
冷たい風が落ち葉を撒き散らして
小さな竜巻が出来ているのを
じっと見つめてたら
はやくー
坂を登ろうとしてるあなたに呼ばれた
さむいねー
鼻を赤くして
坂道を駆け上がると
わたしの住む街が拡がっていた
寒いのに
風は冷たいのに
体がポカポカしてきて
心はもっとあったかかった
なんでここに来たんだっけ?
なんで?
なんで?
二人で笑っちゃった
紅葉見たいって言ってたでしょ
車に戻ってから
あなたがポツンと言った
へぇ
へぇ
そうかぁ
覚えていてくれたんだ
なんにも答えないまま
車は走り始めたけれど
今度はほっぺがちょっと赤くなりそう
紅葉見たいって言ったこと
覚えていてくれたんだ・・・
あったまるもの食べたいね
うどん
味噌煮込みうどん
あっ
カレーうどんっ‼
声が揃ったところで
さぁ久しぶりのカレーうどん
うわぁぁぁー
美味しそうっ
紙エプロンつけてね
はふっはふっふぅふぅ
初めてのデートならちょっと
食べづらいかもね
そんなこと話しながら
もうずっとそばにいてくれる
あなたの顔を見た
あったくて美味しくて
毎日があったかくて優しくて
これから冬に向かうことさえ
幸せに感じてた
あっと言う間に
秋は駆け抜けて
赤く色づいた葉は落ちて
季節は
変わった
あの日に帰りたくなるくらい
二人にいろんなことがあった
今は少しだけ距離を置いて
ソーシャルディスタンス
変わっていく季節のなかでも
二人は
変わらないって
誰か
言って
あなたを見ていた季節から
わたしの心だけを見つめる季節が
はじまっていく