先に帰るね
ずっと一緒にいたいけど
先に帰るね
明日は仕事
あなたも仕事
仕事って大事だもん
仕事大好きだし
本当は・・・
ギリギリまでそばにいようかなって
企んでたのよ
一分でも一秒でも多く
あなたの傍で笑ってたくて
コロコロ笑ってたくて
早起きすれば明日帰っても間に合うかなぁ
それならどんなに早起きしても辛くない
ギリギリまで
迷ってた
だ
け
ど
夕方のJRに乗ることにしたの
ホテルの部屋を片付けて
荷作りして
キャリーケースにいろんなもの
詰めて
想い出までキチキチに詰めて
すぐにまた逢えるでしょ?
すぐにまた逢えるもの
心の中で同じ言葉を繰り返しながら
ひとりで歩く駅までの道
なんだか
泣いてしまいそう
戻りたい
いま来た道を
ポケットの切符を握りしめるの
明日の朝に変えてもらったら
引き返せる
あなたのところへ
あと半日
一緒にいられる
それは
とても
心がときめくチャレンジだけれど…
やっぱり
帰るね
先に帰るね
時間は
ちゃあんと流れていって
またあなたとわたしを
繋いでいくんだ
それでも
列車の中で
帰るね
って
あなたにラインしたら
いっぱい
涙がこぼれた
列車の窓から見える空は
なんて綺麗なんだろう
今 の 一秒後
自由に出かけられなくて
ニュースは不安を駆り立てるだけ
何を見ても聞いても
明日はどうなるんだろう
って気持ちになったら
一秒後のことだけ
考えればいい
一秒後
わたしはきっと元気
一秒後
いま
飲んでるカフェラテは美味しいまま
一秒後
あなたからラインが来たら
一秒後
きっとほっこりして笑ってる
きらきら大切な一秒が積み重なって
わたしの明日を創ってく
こんな風に世界が変わる前から
明日生きてるかなんてわからなかったし
老後の不安はあったでしょ
だから
いま
空を見上げて
一秒後も
空は青空
いつかは曇ったり雨も降るけど
一秒後の空は青空
こんな風に世界が変わったから
生きてることに感謝溢れて
なんでもない日常が
奇跡のように感じる
わたしたちは
とても大切なことを思い出してる
それでも
辛くてたまらなくなって泣きたくなったら
思いきり泣こうね
不安だよー
いやだよーって叫ぼうね
心の中にあるもの全て
大切に感じてあげたら
一秒後
あなたはきっと
笑ってる
大人さまランチ
外出禁止って言われても
お昼ご飯は食べなきゃいけないし
夜は外出できないから
せめて美味しいもの食べたいな
大人さまランチ
午前中でお仕事は終わったし
ごめんね
時間があまり無いのか
急いで食べてるお隣のお客さんたち
わたし
ビールを飲んじゃいます
そしてねそしてね
あーっテンション上がるっ‼
ハンバーグと
ナポリタンと
グラタン
子供の頃大好きだったものばかり
今も大好きなものばかり
あのね
ランチの女王ってドラマ知ってる?
あのドラマに出てくるお料理が
とっても美味しそうで
竹内結子が食べてる姿がとっても可愛くて
だから今日のわたしは
竹内結子になりきって食べます‼
ハンバーグ
ビール
ビール
グラタン
ビール
ナポリタン
ビール
美味しいなぁ
美味しいね
ハンバーグは多分合い挽き
パン粉が多めで優しい味がする
カニクリームコロッケの下には
タルタルソースがたっぷり~
グラタンに隠れてるウレン草は
バターで炒めてるのかな
しっとりしてるのにコクがある
ナポリタンには
いっぱい粉チーズをかけるのだー
いろんなこと
あるよね
不安だし
ビビっちゃうし
これからどうなるのかな
って
今
きっと
みんな
思ってる
だから
美味しいランチを食べるのだ
味わってテンション上げるのだ
大変な中でランチを作ってくれる
シェフにありがとう
もしかしたらお子さんお留守番させて
仕事に来てくれてる
ウェイトレスさんにありがとう
みんなみんな
それぞれの役割を頑張ってくれるから
こんなに美味しいご飯が食べられる
まだまだ
わたしも
頑張れる
未来がどうなるかわからないけど
いま幸せを見つける努力が
一瞬一瞬積み重なって
明るい明日がやってくると信じたい
ごちそうさまでした
お店を出ると
おなかいっぱい
ピール一杯でいい気分
さぁ
明日も働くよ
わたしのために
みんなのために
希望
朝起きて満員電車に押し込められて
仕事して怒られて
たまには怒る役目になって
クタクタに疲れて家に帰る
それでも
家の灯りを見たらホッとする
おかえりなさい
優しい声と暖かい部屋
ビールを飲んで
テレビ見て一日が終わる
また明日もおんなじ繰り返し
それでも
こんな毎日も悪くないな
なんて思ってた
でも
新しい扉が開いた
もう満員電車乗らなくていいよ
もう
本音じゃない言葉言わなくていいよ
学校も会社も行かなくていいよ
楽しいことやろう
大好きなことやってみよう
お金があってもなくても
生きていける世界の扉が開いた
何かにすがるのではなく
誰かにもらうのでもなく
考えて
考えて
自分にしか出来ないこと
不安も恐怖も手放して
きっと
未来の世界は知っている
いま起きていることが
絶望ではないこと
希望に向かって舵をとっていけること
この綺麗な地球に生まれてきた
わたしたちは
そんなに
弱くない
大丈夫
雨の遊園地
遊園地に行きたい
そんな気持ち忘れていた
でも
たまたま遊園地の傍のホテルに泊まって
ねぇねぇ遊園地に行こうよ
入場券を買わなくても中には入れたから
遊園地の中を二人で歩いた
ジェットコースターや
メリーゴーランド
バイキングにウォータースライダー
キャーキャー言いながら乗ってた頃の
昔話しながら
ゆっくりゆっくりあなたと歩いた
高校生の頃ね
このへんでデートしてたんだ
あなたが言う
へー 何に乗ったの?
お金がないからさ
遊園地に入って歩いただけ
そばの公園のベンチに座って
お喋りして終わり
ふぅん・・・
無口なあなたは高校生の時
いったい何を喋ったんだろう
その頃わたしもこのあたりにいて
もしあなたと出逢えたら
あなたはわたしを選んだのかしら
わたしもあなたを好きになったのかしら
ううん
大人になってから巡り逢えて
だから
今この時間がある
小雨が降ってきて
遊園地を見下ろせるカフェに入った
大好きな白玉ぜんざいがあって
テンションあがるわたしの横でも
あなたは変わらず無口なまま
いつもお酒飲んでる二人が
珈琲とぜんざいなんてなんだか笑っちゃう
遊園地を見下ろしながら
まだ何にも乗ってないけど
来て良かった
あなたと来て 良かった
珈琲を飲み干して外に出たら
雨は
すっかりあがっていた
ばいばい
なんにも乗らなかった
それでも幸せだった
遊園地
いろんなことがあっても世界は優しい
旅に出た
もう真っ暗になった空を見ながら
冬の列車に飛び乗って
出来れば夕焼けが見たかった
なんて思いながら
窓に写る缶ビールをじっと見つめて
旅に出た
母が倒れたのは1ヶ月以上前
最初はただの骨折だったのに
どんどん悪くなって
集中治療室まで運ばれて
何本も管が体に通された
ばあちゃん危ないからっ
慌ててやって来た息子に
母は笑顔で言った
ばあちゃんもうきっと煙草吸えないから
ばあちゃん家にある煙草
帰りに寄って持ってきなさい
そんな言葉聞いたら
わたし涙でぐしゃぐしゃになる
お母さん
もう一度煙草吸おうね
お家に帰ろうね
その言葉どおり
母は奇跡的に回復して
さすがに煙草は吸えないけれど
退院できるかもしれない
でも退院しても介護はきっと必要で
今までのようにはいかないよね
そんな気持ちのまま
旅に出た
列車はゆっくり走る
ゆっくりに感じるだけなのかな
隣の席は空席で
通路の向こうに座ってるおじさんは
ホットゆずレモン飲んでいる
音がしないように
そっと缶ビールを開けた
美味しい…
いろんな事があったこの一カ月
母の事だけじゃなく
ものすごくいろんな事があった
帰ってからも
やらなきゃいけない事はいっぱいあって
考えると少し憂鬱になるけれど
いまは
冷たいビールと
ガタンゴトン
列車のリズムと
待っている友達の笑顔が浮かんでくるから
やっぱり
旅に出て良かった・・・
いろんな事 あるよね
生きてると
辛い事も
逃げたくなる事もあるよね
だけど
わたしがわたしを大切にしてあげる限り
きっと世界はわたしに優しい
わたしがわたしを幸せでくるんだ分だけ
きっと世界はわたしを幸せにしてくれる
そう信じて
眠っていても
列車が目的地に運んでくれるように
もがいたり焦ったりしなくても
ちゃんと行きたいところに運ばれていく
わたしたち
みんな
次の日の夕焼けは
こんなに綺麗だった
ほらね
聞いてる?
紅葉にはまだ早いかな
と思ったけれど
あまりに疲れていて
自然の中で思いきり深呼吸したくなった
やらなきゃいけないこと
やらなきゃいけないこと
やらなきゃいけないこと
せかされて焦らされるけれど
他の誰かでも出来ることを押しつけないで
わたしには
わたしにしか出来ないことがあるの
そんな想いで体中がいっぱい
あなたが運転する車の助手席で
ポツンポツンと愚痴ったけれど
なんにも答えない
黙ってハンドルをきってるだけ
聞いてる?
トンネルを抜けて
トンネルを抜けて
何個目のトンネルを抜けたでしょう
目の前に
ぱあーっと紅葉が拡がった
緑の中に
黄色
茶色
赤
真っ赤
きれいだね
あなたが言う
きれいだね
わたしが言う
そして
車から降りて
二人で紅葉を見つめた
黙って紅葉を見つめた
そうかぁ
心に何かを染み込ませる時
ひとは黙ってしまう
言葉に出来なくなる
わたしの話になんにも答えなかったのは
わたしの話を
ちゃんと聞いてくれてたのね
寒い…
わたしの言葉で車に戻った
車の中はあたたかくて
あなたの笑顔もあたたかかった
もう
大丈夫
聞いてくれるひとがいる
それだけでもう大丈夫
黄色
茶色
赤
真っ赤
わたしはどの色で咲くのかな
どこにいても
どんな場所でも
わたしらしく
歩いていこう