わたしの見たい世界を選ぼう
たとえばね
今日わたしはハンバーグを食べたの
大好きな人と
最初はパスタを食べに行こうと思ってた
あそこのペペロンチーノは
あなたが大好きだから
でもわたし
ペペロンチーノは今日はちょっと無理かな
うーん…カレーがいいかな
それともいつもなら無視する日替りランチ?
そんなことブツブツ車の中で喋っていたら
ほら、ちがうお店のハンバーグはどーお?
あなたが言った
でも
あそこのペペロンチーノ食べたいんでしょ
心で呟いたけれど
こういう時は頑固
もうわたしが食べたくない事に気づいてる
仕方ないから素直になる
じゃあハンバーグハンバーグ
ホントは久しぶりに
あのお店のハンバーグ食べたかったんだーっ
精一杯明るくするけれど
ちょっと胸が痛んだりする
だって
あなたの笑顔を見られるならそれで良かったの
美味しそうにペペロンチーノ
食べてるあなたを見つめられれば
わたしは満足だったの
そんなわたしとおんなじように
わたしの美味しそうな顔を
あなたも見たいんだなぁ
って思ったから
小さな胸の痛みは押し込めて
ハンバーグ食べに行きましょう
レストランに着いたら
焼き方が変わってて
トッピングも変わってて
店員さんも無愛想で
わたし達の知ってるお店じゃなくなっていた
狭い席は嫌だったから
テラスの席が開くまで待つことにした
店員さんは軽く溜息をついて
今テラス片付けますから
と ぶっきらぼうに言った
ペペロンチーノにしてたら
こんな思いしなくてよかったのかも
あなたに悪くて
なんだかシュンとした
やっと片付けてもらったテラスで
スープとサラダを食べ始めたけど
あなたはなんにも喋らない
ぼんやり見えるテレビの画面を
あなたに説明してみたけれど
興味ないみたいで
テレビの方に振り返りもしない
スープもサラダもぬるくて
急に泣きたくなる
前はもっと熱くて
もっと冷たかったじゃない
もっと店員さんも笑顔だったじゃない
もっと…
そんなこと考えているうちに
ハンバーグがテーブルに運ばれてきた
自分の分だけフォークとナイフを取って
あなたは食べ始める
いつもなら
わたしに先に取ってくれるのに
美味しいね
ちょっと胡椒がいつもより効いてるね
そんな言葉も届いてないみたい
なんにも喋らないで
ふたりでハンバーグを食べた
喋らないから気まずくて
先に食べ終わりそう
ひと口残ったご飯をあなたに
あげようとしたら
あなたがハンバーグをひとかけら くれた
そうじゃないんだ
そうじゃないんだ
でも言えなくて
もらったひとかけらのハンバーグと
残りのご飯を無理矢理口に押し込んだ
テレビには
見たかった映画の予告編が映ってる
予告編の話も言えなくて
なんにも言えなくて
ペペロンチーノにしていたら
もっと二人お喋りだったかな
ふぅーっと息を吐いて
食べ終わったあなたは
おなか空いてたんだなあ
ってポツンと言った
え?
そんなにおなか空いてたの?
うん
それに風邪もひいてるみたいで
ちょっとだるくて
風邪薬飲んでおこうかな
ニコニコしながら
バッグから風邪薬を出して
店員さんにお水を頼んでる
さっきまで不機嫌に見えた店員さんは
すぐにお水を運んできてくれた
わたしが今まで見てた世界は
いったい何だったのかしら
あなたはペペロンチーノ食べたいのに
わたしのハンバーグに合わせてくれて
なのにお店はいろいろ変わってて
わたしは申し訳なくて
だから
あなたも無口になってて
だから
わたしもギクシャクしてて
そんなの
ぜんぶ
勝手に思い込んでただけだった
あなたはお腹空いてたから無口で
店員さんは忙しい時間だったから無愛想で
それだけだった
なんにもなんにも
わたしのせいじゃなかったんだ
またテレビには映画の予告編が流れてる
これこれ
この映画見たいから一緒に行こうね
今度は振り返ってテレビを見たあなたが
優しく優しく
頷いてくれた
世界は光と影でできている
けれど
見たい世界は
きっと
自分で選べるのです
好きな人に いま 好きって 言おう
なんでもない毎日の中で
わたし
いますごくジタバタしてる
そのくらい大きな悩みがあるのよ
でも
言わないね
あなたには
だって
あなたのことが大好きだから
多分
そのことを言ったら
あなたはとても心配して
今みたいに笑わなくなるでしょ
「言ってほしかった」 って
後でわかったら怒られるかな
わたしも
前なら甘えて甘えて甘えて
あなたに助けてほしかった
でも今はあなたにそんなこと
求めてないの
こんなに悩んでいるんだから
あなたと一緒にいる時は
その悩みを忘れたい
あなたが大好きで
わたしも愛されてて
二人で微笑んで
世界を優しさで埋め尽くしたい
なんでもかんでも
言わなきゃいけないくらい
若くもないし
たとえわたしが
あと少ししか生きられないとしても
あなたには
言わない
あなたに言う言葉は
いつもひとつだけ
大好き
それだけ
好きなひとに
いま
好き
って言おう
他の言葉なんて
いらない
また旅に出る日まで
ふたりの旅はやっぱり楽しくて
あなたのことが好きだと思う
大好きだ と思う
でも旅には必ず帰る日がやって来て
また
いつもの日常に戻っていく
あんなに綺麗な空も海も
二人で過ごした柔らかい時間も
まるで夢の中みたいに薄れて
ぼんやりしていくうちに
毎日は忙しくて
悩むこともあって
唇噛み締めたくなるような言葉を言われたり
うまくいかない事をなんとか乗り越えたり
ふぅーっ
と
溜息ついて立ち止まった時に
あなたからのラインに気がついた
もう返信しても間に合わない内容に
胸が痛くなる
でも
これも
幸せなんだ
毎日が旅で
毎日が優しい時間だったなら
あなたへの想いも
こんなに切なくないでしょう
小さな幸せや安心や
小さな苛立ちや寂しさを
ぜんぶぜんぶ まるごと受け取りながら
また
旅に出る日まで
わたし
綺麗に
生きていくよ
幸せのかたち
幸せって
なんにも悩みがなくて
好きなときに
好きなところに行けて
好きなものを
好きなだけ買えて
好きなひとに
好きって言われて
好きなだけ
好きなことをする
夢みたいね
そうなったらいいね
だけど
幸せって
もしかしたら
違う形もあるのかもよ
小雨が振りだした空の下で
ぱあーっと開いた傘が
春の桜みたいだったり
自転車で通りすぎた男の子が
小さかった頃の息子にそっくりだったり
地下鉄でいちばん端の席に座れたり
なんでもない毎日が
今日も繰り返されていく
そんな幸せの形で創られている
わたしの世界
今日の雲は
羽衣みたいに
わたしを包んでく
うまくいかないまんま
大人になると
うまくいかないことがあっても
平気な振りしていませんか?
わたしは
先週 仕事でミスをして
めちゃめちゃ落ち込みました
落ち込んで何にも出来なくなって
友達に大切なメールを送り忘れて
友達にも嫌われそうです
悲しい気持ちを慰めてほしいのに
あなたは忙しくて
まったく
逢えない…
泣きそうな気持ちになりながら
ひとりで
うまくいかないことを見つめてる
ね
でもね
それがきっとベストなの
うまくいかないことって
うまくいってたら
うまくいかなくなっちゃうから
うまくいかないの
仕事でうまくいってたら
きっと
こんなに今練習しなかっただろうし
友達にサッサとメールしてたら
友達の気持ち考えなかっただろうし
あなたに毎日逢えてたら
まぁいいや
って
ちゃんと落ち込むことも出来なかった
うまくいかないことを
うまくいってるんだ
って
誤魔化すんじゃなくて
うまくいかないことまるごと
これでよかったんだ
って愛してあげよう
うまくいってもいかなくても
わたしは他の誰にもなれないし
他の誰にもなりたくない
うまくいかないまんま
わたしはわたしらしく
歩こう
ね
道は
ずっと 続いてる
日本晴れ の 空
日本晴れ
って最近あんまり言わないんだって
だから
若い子は知らないんだって
そんな会話で始まった朝
わたしの心は日本晴れでした
雲ひとつない空は
わたしの気分そのもので
今日はあなたとどこへ行こう
そればっかり考えていた
なのに
お昼から小雨が降りだして
風が吹き始めて
あなたからラインが返ってこなくって
夕方
やっと連絡がついたら
ごめんね
今日は仕事だから
あー
もっと早く連絡してください
日本晴れの心は
夜にはすっかりショボくれて
そのまんま眠った
まあるくなって眠った
朝
起きても
寂しいまんまだったけど
お掃除して
お洗濯して
仕事へ出かけて
帰り道
地下鉄に乗らないで
歩いた
モヤモヤしてる寂しさを吹き飛ばしたくて
歩いた
見上げたら
今日も
ううん
今日の方が
日本晴れ
立ち止まって
息を吸って
空を見上げて
わたしの心がどんなになっても
晴れる時は晴れるんだね
それなら
わたしの心がどんなでも
この空に
まかせよう
一人ぽっちで歩く道の上に拡がる
わたしを包み込むような
日本晴れの 空
寂しさが
溶けていく 空