わたしに出逢う 街
住んだこともないのに
懐かしい 街
着いたら
目が痛くなるほどの夕陽が
沈んでいくところだった
写真を写すのも忘れるくらい眩しい夕陽は
瞬きしている間に
沈んでしまう
写真なんてどうでもいい
わたしが夕陽を見つめている方が大事
何かに残そうとか
誰かに見せようとか
いつからそんな風に
大切な瞬間を切り取ろうとし始めたの?
この世界は
いま
しかないのに
気がつくとすっかり夜
青い闇の中に街灯が輝く
ひとりで川を見つめながら
ゆっくりゆっくり歩く
吹く風は
わたしの街よりずっとずっと涼しい
ねぇ
何かになりたくて
走ってきたよ
でも
何にもなれなかった
わたしは
わたしにしか
なれなかった
こんなに長い時間をかけて
何かになろうとしてきたのに
こんなに長い時間をかけて
わたしはわたしにしか なれなかった
ちっぽけで
いいじゃん
ちっぽけなわたしを
ちっぽけなわたしが
笑って見てる
ちっぽけだね
ちっぽけだね
わたしが
笑って
わたしを抱きしめる
どんなわたしも可愛くて
どんなわたしも素晴らしくて
それを決めるのは
他の誰かじゃない
わたしだけ
わたしだけ
住んだこともない懐かしい街で
わたしは
わたしに
出逢っていく
本当の自分に
還ろう
幸せを見つける方法
わたしがまだ二十歳のとき
朝から夜まで一日働いていても
ぐっすり眠って
また朝から夜まで働ける
そんな元気な女の子でした
でも
その時わたしは
幸せではありませんでした
わたしはもっと
幸せになりたいと思いました
そうだ
大好きな仕事で
お金をいっぱい稼げるわたしになろう
そして
わたしは二十五歳になりました
わたしの願いは叶いました
大好きな仕事が毎日出来て
お金も稼げるわたしになりました
でも
そうなっても
わたしは幸せではありませんでした
わたしは
もっと幸せになりたいと思いました
そうだ
愛する人を見つけよう
そして
わたしは三十歳になりました
わたしの願いは叶いました
愛する人に愛されて
わたしは妻になり母になりました
でも
そうなっても
わたしは幸せではありませんでした
わたしは
もっと幸せになりたいと思いました
そうだ
子育てしながらキャリアを積もう
そして
わたしは四十歳になりました
わたしの願いは叶いました
子育てしながら
仕事に復帰して
毎日忙しく働きました
でも
そうなっても
わたしは幸せではありませんでした
わたしは
もっと幸せになりたいと思いました
そうだ
若い時みたいに元気になろう
わたしは五十歳になりました
わたしの願いは叶いません
だって
もう若くはないのです
もう二十歳のわたしには戻れないのです
戻れないのです…
わたしは五十五歳になりました
若さも仕事もお金も家族も
わたしの手から少しずつ
こぼれ落ちていきました
わたしは年をとり
愛する人と別れて
仕事はだんだん少なくなり
お金も若い時より稼げなくなりました
そして
わたしはいま
幸せです
朝起きて
感謝します
今日も一日始まること
淹れたての珈琲が美味しいこと
青空が拡がっていること
わたしの足で早くはなくても
ちゃんと歩けること
夜眠る前に
感謝します
今日も良い一日だったこと
冷たいビールが美味しかったこと
夜空の星に祈りを捧げられること
静かな夜に
あたたかいお布団で眠れること
幸せは
なんでもない
小さな小さな繰り返しを
飴玉を口の中で転がすように
ゆっくりゆっくり味わえばいい
遠くにあるのは
本当の幸せではありません
いま
自分が手にとれるもの
そこに
幸せが
あるのです
手を伸ばすより
手を当てて
胸の鼓動を
感じよう
愛される わけ
好きになりました
恋をしました
その人が大好きで大好きで大好きで
わたしは
わたしの気持ちより
その人の気持ちを考えました
好かれたくて
愛されたくて
その人の行きたいところへついて行き
その人の食べたいものに合わせて
その人のために早起きして
その人を待つために
夜遅くまで眠りませんでした
その人は
わたしを
だんだん大切にしなくなりました
なぜ?
あんなにわたしの気持ちを殺して
あんなにすべてを合わせたのに
わたしは
わたしより
その人が大切だったのに…
時間が流れて
また
わたしは新しい恋をしました
今度はなんにも頑張りませんでした
わたしには愛されている自信が
あったからです
わたしの行きたいところへ行き
わたしの食べたいものに合わせてもらって
わたしは勝手に遊ぶ
勝手に喋る
勝手に眠る
今度の人は
わたしが尽くしたその人よりも
はるかに
幸せそうです
そして
いつまでも変わらずに
わたしを愛してくれています
わたしは
わたしより
なにかを大切にしちゃいけなかったの
恋人も
お金も
仕事も
何もかも
わたしより大切なものなんて
この世界にはひとつもなかった
わたしは
いつも
どんな時でも
わたしの気持ちだけを
いちばん大切にしていれば良かったの
愛されるわけは
きれいだから
とか
優しいからとか
女らしいから
とか
みんな
嘘
愛されるわけは
たったひとつ
自分を大切にするだけなのです
さぁ
今日もわたしのために
生きよう
五月の終わりに…
早起きしてスニーカー履いて
歩き出した五月の道
光いっぱいの緑の中で
久しぶりに深呼吸してみた
ウォーキングする人たち
仕事へ向かう人たち
愛犬をお散歩させる人
自転車でわたしを追い越していく人
みんな
どこへ
行くのだろう
みんないつかいなくなるのにね
何でそんなに毎日毎日
焦って
急いで
どこかへ向かうのだろう
わたしも
どこへ
行きたいのだろう
五月が好き
若葉と
強くなる陽射しと
涼しい風の
五月が好き
なのに
五月は忙しく過ぎ去って
なんにも
出来ないうちに
終わってしまう
大切にしたい瞬間を
大切に出来ないなら
大切にしていけないまま
わたしの時間も終わってしまう
この
五月みたいに…
立ち止まって
ちゃんと空を見よう
足元の花を見つけよう
伸びた髪を風にまかせよう
二度と来ないわたしの瞬間を
わたしが
いっぱいいっぱい
感じてあげよう
五月はおわっていくけれど
わたしの世界は
終わらない
本当に
行きたい場所は
どこですか
眠り姫
お休みになるまで
毎朝4時に目が覚めた
仕事が忙しくて
やることがありすぎて
一日の中に一日が収まりきれなくて
いつも
水が少なくて口をパクパクさせる
金魚みたいに
焦っていた
一生懸命だった
そんな自分も好きだった
頑張るわたし
その先には長いお休みが待っている
お休みまで走ろう
そして
お休みの日も朝4時に起きた
お洗濯してお掃除して
部屋を綺麗にして
あなたを待った
旅が始まる
行ったことのない町
初めて見る景色
雄大な自然にときめきながら
わたしはずっと眠っていた
車が走っている間
わたしはずっと眠っていた
隣で運転してくれているあなたに
とても申し訳なかったけれど
いくらでも眠れた
どんな綺麗な景色を見ても
車に戻るとまた眠った
美味しいランチを食べて
はしゃいで
青いビールを飲んで
ふんわり酔って
旅館の朝ごはんに
ワクワクして
いっぱいいっぱい楽しくて幸せで
空が青くて
夕陽が綺麗で
なのに
また眠ってしまうの
あなた
あきれた顔で
よく寝るね
って
笑っているから
旅した五日間
甘えて
眠たいだけ
眠った
まるで
眠ってしまう魔法をかけられたみたいに
いつまでも眠れるわたし
すやすや眠るわたしの横で
目的地に向かって一生懸命
ハンドルを握るあなた
なんか
いつから
こんなに
愛されるようになったのかな
お姫様の年じゃないけれど
お姫様みたいなわたし
王子様みたいな年じゃないけれど
王子様みたいなあなた
眠りの中でずっとずっと
あなたの
愛を感じてる
ごめんね
そして
ありがとう
目が覚めたら
あなたの優しい笑顔が
いつも
わたしを 見つめてる
寂しさは 幸せの証
寂しくなってはいけないのです
だってみんな頑張っているし
だってわたしは頑張ってないし
ヘラヘラ笑って過ごしてる毎日の中で
寂しくなってはいけないのです
寂しい
って言ったら惨めです
寂しい
って言ったら
誰かに我が儘って言われます
やってきた幸せに感謝して
幸せが終わったら
ちゃんと手放して
いい子にしていれば
また次の幸せがやってくるから
だから
嘘
今日はとても寂しいのです
お休みが続いて
あなたとずっと一緒にいられて
夜は手を繋いで一緒に眠った
朝はすっぴんで
おはよー って 言った
風に吹かれて岬を巡った
飛ばされそうなくらい強い風も
あなたの腕にしがみついていたから
怖くなかった
あなたが
いつも
そばに
いた
だから
寂しい…
わたしがわたしの寂しさを
感じてあげなければ
その寂しさはなくならない
寂しい
って言っていいのです
寂しくなるほど
大切にされていたお休み
さよなら
寂しい気持ちをひたひたに感じながら
静かに眠る ひとりぼっちの
春の 夜
寂しい
って
寂しくないわたしがいることの
証なの
そのままで 愛される
最近ね
寂しかった
あなたは今まで通りなのに
わたしの生活だけが変わる
会えていた時間に会えなくなる
二人で出かけていた時間に
わたしだけが仕事してる
ごめんね
ごめんね
だから
逢える日にはいっぱい笑って
いっぱいお喋りして
会えない時間を取り戻したいのに
なんだか
ギクシャクしてしまう
言葉が
うまく
伝わらなくて
ポツリ
ポツリ
隣で盛り上がってる恋人たちは
あんなに
楽しそうにしてるのに
なんかなぁ…
もう
いいかな
なんて思ってしまう 夜
そんな夜が続いた日
いっぱいビールを飲んで
いっぱい酔っ払った
忙しいわたし
やっと明日はお休み
ビールは美味しいし
明日はゆっくり眠れるし
みんな優しくて
あなたも久しぶりに笑顔で
だから
言っちゃった
わたしを大切にして
つまらなくさせないで
言ってみたら
なんでもなかった
ギクシャクしていたのは
わたしの罪悪感
もっと簡単に
もっとシンプルに
大好きな人を失いたくないのなら
もっともっと
自由に生きて いいんだよ
わたしが飛びたい空は
わたしが決める
そのままで
愛されるから