そばにいてくれるだけでいい
ずっと具合が良くなかったあなたが
やっと少しだけ元気になって
お迎えに来てくれた夕暮れ
大丈夫?
聞いてみたけれど
大丈夫って答えるの当たり前だね
我慢強いあなただもの
もう何十回
あなたの車に乗っただろう
もう何十回
あなたの横ではしゃいだだろう
いつもの助手席なのに
なんだか初めて乗ったみたいな気分
あなたの顔をそっと覗くと
まだ少し顔色が良くないみたい
不安な気持ちを押し込めたりしないで
不安をそのまんま感じてあげる
不安は安心して
わたしの中から消えていくから
走り出す車の距離と一緒に
いつもの助手席に慣れていこう
小さなジョークや
なんでもない話を
一生懸命喋り出すわたし
あなた
聞いてるのか聞いていないのか
なんにも答えない
でも
こうして隣にあなたがいてくれたら
それだけで
いい
あなたが元気でいてくれて
わたしも元気であなたを笑わせて
そんな日は
いつか必ず必ず終わるのだけれど
まだ
今じゃない
運転しているあなたの横顔を
じっと見つめて
なに 考えてるの?
そう言いかけた時
空
綺麗だよ
あなたがわたしに言った
こんなに綺麗な世界に生まれて
こんなに大好きなあなたに逢えた
なんにもなんにもいらないよ
そばにいてくれるだけで
いい
信号待ちの一瞬
ぎゅっ と
あなたがわたしの手を
握った