わたしに出逢う 街
住んだこともないのに
懐かしい 街
着いたら
目が痛くなるほどの夕陽が
沈んでいくところだった
写真を写すのも忘れるくらい眩しい夕陽は
瞬きしている間に
沈んでしまう
写真なんてどうでもいい
わたしが夕陽を見つめている方が大事
何かに残そうとか
誰かに見せようとか
いつからそんな風に
大切な瞬間を切り取ろうとし始めたの?
この世界は
いま
しかないのに
気がつくとすっかり夜
青い闇の中に街灯が輝く
ひとりで川を見つめながら
ゆっくりゆっくり歩く
吹く風は
わたしの街よりずっとずっと涼しい
ねぇ
何かになりたくて
走ってきたよ
でも
何にもなれなかった
わたしは
わたしにしか
なれなかった
こんなに長い時間をかけて
何かになろうとしてきたのに
こんなに長い時間をかけて
わたしはわたしにしか なれなかった
ちっぽけで
いいじゃん
ちっぽけなわたしを
ちっぽけなわたしが
笑って見てる
ちっぽけだね
ちっぽけだね
わたしが
笑って
わたしを抱きしめる
どんなわたしも可愛くて
どんなわたしも素晴らしくて
それを決めるのは
他の誰かじゃない
わたしだけ
わたしだけ
住んだこともない懐かしい街で
わたしは
わたしに
出逢っていく
本当の自分に
還ろう