お金は汚くなんかなかった

お金を触ったら手を洗いなさい

汚いんだから

お母さんに言われた

いろんな人が触るから

いっぱい汚れているんだから

そうなんだぁ…

わからないけど手を洗った

お金を触った後は必ず石鹸で手を洗った

大人になって

お金を稼ぎたいと思った

いっぱい働いていっぱい遊んだ

お金がほしいのに

お金をたくさん持つのが怖かった

お金は汚れているから

お金をほしがると私まで汚れていく気がした

だけどやっぱりお金は必要だった

お金をちゃあんと見つめてみた

こんな色してこんな顔して

こんなふうな後姿で

いつも

わたしを助けてくれた

わたしが美味しいパンを買う

パン屋さんにわたしのお金が

お引っ越しする

わたしのところにパンが来る

あったかい焼きたての幸せ

パン屋さんはわたしのお金で

違う幸せを手に入れる

お金はただ移動するだけで

わたしもパン屋さんも幸せにする

お金は

ちっとも

汚くなかった

わたしを幸せにするために

いろんなものを運んでくれる

宅急便のイケメンのお兄さんみたいに

一生懸命走ってくれる

お金のことばかり考える時は

多分お金が足りない時なんだ

お金のことより楽しいこと考えてると

お金も楽しくなって

思いがけずやって来てくれて

そのうち

お金のことをぜんぜん考えなくなっても

お金はせっせと

幸せを運び続けてくれる

お金はみんなに平等で

毎日毎日 忙しく働いてくれる

受け取ることさえ出来たなら

お金はいくらでもやって来る

そんな風に思えるようになったから

ある日

お金を抱きしめて

ごめんね

って言ってみた

汚いなんて思ってごめんね

ありがとう

って言ってみた

お金はわたしの腕の中で

ぷるぷる震えて

テレるぜ‼って言って

まかせとけ‼って言って

笑った

わたしは

お金が

大好きに　なった