さよなら 朝市食堂
旅に出る日は
なぜこんなに自由になれるんだろう
たまっている雑用も
帰ったらやらなきゃいけない仕事も
とりあえず忘れて
いま
を
楽しめる旅の朝
必ず
ここに寄った
朝市食堂
朝7時でも8時でも
二日酔でも
まず生ビール
旅の始まりはいつもビール
これから行く街の話と
鮪のお刺身を肴に
ふんわりした酔いに包まれながら
おにぎりを頼んだり
お味噌汁を飲んだり
たまには
朝からミニいくら丼食べたりしながら
幸せな幸せな時間は
いつも朝市食堂から始まっていた
突然の 閉店
知らなかったよ
教えてよ
寂しいよ
朝市食堂
閉店したお店の前に
何人もお客さんがやって来る
えー
閉店したの?
びっくり
ショックー
そんな声が聞こえる中
遅れてこっちに歩いてくる
あなたに駆け寄った
朝市食堂
閉店したんだって
声がうわずって
目の奥が熱くなった
どんな人がお料理していて
どんなお姉さんが運んでくれたかも
思い出せないけれど
朝市食堂は
大切な大切な場所だったんだ
幸せな思い出しかない
大切な大切な…
仕方ないね
他のお店に行こう
どこがいい?
わたしを気づかうあなたの声に
朝市食堂みたいなとこ…
小さい声でやっと答えた
朝市食堂の前には
次々
ひとがやって来る
うそー
寂しいねー
そんな声に背を向けて
わたしはあなたと
歩きだす
さよなら
朝市食堂
たくさんの
優しい朝を
ありがとう