やりたいことが いっぱい ある
アスファルトが見える歩道を
カツカツ音たててブーツで歩く
冬 なのに 春がくるみたいに
暖かい 日射し
今年も終わっていく
一年が早いのは
初めてのことが少いからだって
誰かが言った
同じリズム
同じサイクル
同じ出来事
そんな中に季節は埋もれていくのかな
知ってることなんて本当にわずかだ
こんなに生きてきたのに
本当に わずかだ
初めてのことなんてまだまだ
たくさん あるはず
なのに
時が過ぎるのが早いのだとしたら
それはね
怠けているんだと思う
心が
鈍くなっているんだと思う
鈍感なわたしに
敏感な毎日はこない
目の前に表れる
ひとつひとつの出来事に
ときめいて満たされて溢れていける
そんな毎日を選びたい
19歳になったばかりの彼女は
とても可愛くて素直で前向き
行動力もあって ハキハキものを言う
なんにも悩み ないんだろうな
そんな彼女が
不治の病を抱えているのを知ったのは
半年前だった
治らない 難病
治療法もない
同じ病のひとが亡くなっていく
自分も いつまで 生きられるかわからない
その話を聞いたとき
彼女は目に涙をいっぱい溜めて
とぎれとぎれにこう言ったんだ
やりたいことが
いっぱい
ある
大きな瞳からこぼれ落ちる涙を
ぬぐう手は 赤くただれている
物にさわるだけで こんなふうに
なっちゃうんです
ひどい時は 食べるだけで
食道も胃もただれてしまうんです
そんな辛い病気を背負って
一生懸命 生きてきたんだ
なぜ彼女が明るいのか
前向きなのか
私はやっとわかった気がする
彼女は 生きている んだね
一瞬一瞬を
永遠に続く毎日なんてないのに
永遠に続くみたいに勘違いして
私たちは鈍感になる
感謝を忘れる
でも
なんでもないこの一日は
2015年12月14日の
二度とこない朝なんだ
二度とこない一瞬一瞬なんだ
あっ と言う間に一年は終わらない
あっ と言う間に一年が終わっていくのは
生きていくことを
怠けてきたからです
彼女はいま入院している
だけど絶対絶対絶対
元気に退院してくるって信じてる
やりたいことを
いっぱいやって
生き抜いてくれることを
信じてる
やりたいことを
やるために
命には限りがあるんだ