まるで少女みたいに恋をする

毎日は優しい奇跡で溢れてる 一緒に奇跡を見つけませんか

私が見ているもの


風が強くて
出かけたくはないけれど

昨日
迷惑をかけてしまった彼女に謝りに
小さなお菓子を抱えて
家を出たの


憂鬱…


でも


行かなくちゃ



私よりちょっと年上で
ひとりで暮らしている彼女は
明るくてハキハキしていて
責任感のあるとても信頼できるひと

私はいつもふらふらしていて
彼女からの連絡に
ちゃんと答えていなかった


でもそれももう おわり

私は出来ない、って
伝えるんだ
それを伝えなかったから
こんなに迷惑かけちゃったんだもの


自分の気持ちをちゃんと伝える
ずっと練習してきた事じゃないか


彼女にも言える
きっと言える



ピンポーン


彼女の家のチャイムを鳴らす



ガチャッとドアが開き
彼女が顔を出した



昨日は本当にすみません
ご迷惑おかけしました


あらら、いいのよ


優しい笑顔
目尻の皺が余計に優しく見せる
いい感じに年を重ねてきたんだな



これ…と
お菓子を差し出して


本当にありがとうございます
代わりに届けてくださって
助かりました

あの

私 いつも仕事の時間が
ハッキリしなくて
だから これからは
頼まれても無理なんです


言えた!!







だから
頼んでいいのよ




は?



だから

無理だ、って言ってくれたら
いつでも私が行くから
遠慮しないで
頼んでいいのよ

私は連絡する責任もあるし
あなたが出来ない時は
いつでも助けてあげる
責任もあるのだもの

でも連絡しなきゃいけない立場だから
メールだけは送らせてもらってるの
忙しい時は気になったでしょう?
ごめんなさいね



でも



もうおしまい



彼女がわたしをじっと見つめた




今月でこの役目は終わりなの
来月から
新しいひとが担当する事になったから


え?
やめちゃうんですか…



止めはしないけど
責任者じゃなくなるの

年だしね




彼女の目がわたしを離れて
遠くを見た


20年…

やってきたのよねぇ…





20年

その頃の彼女は
今の私より多分年下
まだ一人暮らしじゃなくて
家族と一緒の毎日で


その頃から


20年





お菓子なんていいから
持って帰って息子さんと
食べなさい


そう言って
お菓子を私の手に戻した

そのお菓子を
私はもう一度 彼女に渡した







20年間


お疲れさまでした







ありがとう







彼女がお菓子をギュッと抱きしめ
また優しい笑顔を見せた






私は何を見ていたのかな



勝手に
彼女のメールをイヤだなと思って

勝手に
やりたくないけどやらなくちゃと思って

勝手に
出来なくて迷惑をかけて

勝手に
わたしはやりたくなかったんだよ!!と逆ギレして




あー


わたしって


ホントにホントに


ダメな奴です





なのに帰り道 心は 明るい




雨の中


車を走らせながら


私の中で

責任感の強いハキハキした彼女が
柔らかい優しい
一人の女性に変わっていく



迷惑をかけてしまった事も

自分がダメな奴って事も


なんだか
あったかくて 愛おしい



私が見ているものは

私の心のレベルが
見せているもの



だから


もっともっと

暖かいまなざしで

私が世界を


見つめられますように



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どんなに寒い景色のなかでも


暖かいまなざしで


私の世界を


照らしていけますように