少女にもどる 時
水遊び
大好きだった
泳ぐより
潜るのが好きで
水の中で人魚のように
ゆらゆらゆらゆら
揺れていた
息が続かなくなって
顔を出すと
お日様
帰り道
塗れたままの髪の毛から
消毒くさい匂いがして
それが何故か幸せだった
あの日
わたしはまだ少女だった
自転車に乗って
風を切るのが好きだった
知らない道を走って
知らない空気を感じて
どこまでも走れる気がした
いつまでも
このままの私でいられる気がした
見上げると
青空
明日はもっともっと
知らない何か素晴らしいものが
やってくる
そう信じてたあの日
わたしは
まだ
少女 だった
もう
メイクを落として
汗をいっぱいかいてぬぐいもせずに
笑おう
大きな声で歌って跳び跳ねて
踊ろう
海へ行って 潜ろう
自転車に乗ってどこまでも行こう
身につけた生きやすさを
脱ぎ捨てて
このくらいでいいと信じていた
わたしの価値も脱ぎ捨てて…
わたしが 少女にもどる時
時間の舟が
動き出す
あの夏へ