なんにもなくてもいいでしょ
朝起きて
小雨の中買い物へ行った
もう春
まだ冬
の境い目の街を歩く
なんでもある街の中を
なんにもないわたしが歩く
なんにもない
なんにもない
それって
恥ずかしいのかな
パンと
キャベツ
牛乳
特売のシュークリーム
千円札を出して
いくつかの小銭をもらって
なんにもないわたしが
買い物の袋を下げて街を歩く
わたしにも雨は降る
わたしにも空は拡がる
わたしにも風は寄り添う
わたしにも・・・
あなたは何だってあるじゃない
そう見える友達も
なんにもないかもしれないよ
わたしには何にもない
そう思ってる自分にも
なんでもあるかもしれないよ
なんにもなくてもいい
なんでもあってもいい
そんなことは
ちっぽけなこと
大切なのは
なんにもないと
感じているこの瞬間さえ
わたしは生きてるってこと
パンを焼いて
牛乳を温めて
美味しい朝ごはんを食べられるってこと
今日手に入れたもの
パン
キャベツ
牛乳
特売のシュークリーム
そして
今日のわたしの いのち
なんにもなくても
ほら
世界はここに在るでしょ
今日はおとなしくしていましょう
やっと
風邪が治った週末
あなたと出かけた
まだお酒も飲めないし
まだ本調子じゃないけれど
いっぱい笑って
いっぱい喋って
あなたもご機嫌だった
でも
やっぱり
疲れた
遅くに家に帰って
一日ストーブがついていなかった部屋の
冷たい空気に震えながら眠りについた
眼が覚めたら
青空で
暖かくて
まるで春みたいな陽気
昨日までの疲れが嘘みたいに消えていたから
思わずあなたに電話した
今日も
どこか行く?
ワクワクした
ドキドキした
見たかった映画
行きたかったあの場所
今日のスケジュールを考えて
急にときめいた
でも
あなたからの返事は
今日はおとなしくしてましょ
うん
そうだよね
ううん
そうじゃない
どこかへ行きたかったわけじゃない
あなたと
一緒にいたかっただけ
あなたがわたしを気づかってくれてるのは
わかってるけど
しーんと
寂しい・・・
夕方
あなたからラインがきた
調子どう?
夜ごはんくらい食べに行く?
ほんの一瞬嬉しかったけれど
すぐに返事を返した
今日はおとなしくしてる
返信した途端涙が溢れた
おとなしくしてるよ
おとなしくしてたいよ
でも
寂しいよ
拗ねた涙が
季節外れの雨みたいに
はらはらとこぼれ落ちていく
寂しさを感じられるほど
わたし
元気になってきたのね
2019~新年のご挨拶~
寂しい時は
そっと寂しさと寄り添えばいい
悲しい時は
しっかり
その悲しみにひたればいい
悔しい時は
悔しい自分を認めればいい
怒りが湧いた時は
怒りの炎をちゃんと燃やしつくせばいい
不安な時は
不安の中に飛び込めばいい
そして
いま
心地好いことで遊べばいい
子供みたいに
夢中になって
あとは
全部
任せればいい
宇宙は
奇跡をあっ!という間に起こせるのだから
宇宙は
あなたを
誰よりも愛しているのだから
お正月の空
元旦から白い息を吐きながら
空を見上げた時に
この一年は
今までのわたしではいられないな
と
胸がきゅーっんとなりました
それは
嬉しいような
切ないような
少し怖いような
そんな気持ちでした
その日から
どんなに楽しい事があっても
わたしはつまらなくなりました
今までワクワクした事が
まるで色褪せてどうでも良くなりました
体が重たくて
心の中には押し込めてきた感情が
溢れだすようになりました
苦しい
苦しい
外に何かがあるのではなくて
中に苦しさのタネがあるのです
わたしは初めて
愛されないことも
お金が足りないことも
病気も
人間関係も
すべての悩みは
中にあることを確信しました
だったら
中を
綺麗にすればいいよね
わたしの中は
グチャグチャのドロドロです
目を瞑っていては綺麗にしてあげられない
とても辛いお掃除が始まりました
見て
見つめて
寄り添って
感じきっていく
今年が始まってから一週間
それだけを繰り返しました
不思議ね
わたしが怒りを感じてる時は
怒ってる人がわたしの横に現れます
わたしが寂しくてたまらない時は
ひとりなんだ
と感じさせる時間が
わたしの周りを包みます
そんな風に
自分の感情と現実をシンクロさせながら
少しずつ少しずつ
わたしの中は綺麗になっていく
不安でジタバタしていた心は
しーん
と
静かになっていく
そしたら
空は青くて
風は透き通って
世界は急に美しくなった
悩んでることはたくさんあるのに
そんなのどうでも良くて
ただ
ただ
今が愛しい
自分の気持ちをひとつも否定しないで
まるごと
まるごと受け入れる
わたしの一年が 始まりました
あけましておめでとうございます
今年も
このブログに込めたわたしの想いが
あなたの心に届きますように
寂しくなってもいい理由
大阪から帰ってくる友達のために
その日はあのお店に集まろうね
って約束していたの
なのに突然の大雪
友達が乗った飛行機は千歳じゃなくて
東京へ降りた
楽しい再会の夜は
突然一人ぽっちの夜に変わった
仕方ないよね
飛行機飛べなかったんだから
昨日作ったカレーを温めて
パンを焼いて
テレビをつけて
冷たいビールの缶を開けたけど
あんまり美味しくない
疲れてるのかな
テレビもつまんないし
音楽も聞きたい気分じゃないし
録画していたドラマを見始めたら
その間夢中になったけど
終わってしまったら急に空しくなった
カレーのお皿洗うのも
めんどくさいな
飲みかけのビールも
もういらない
もし雪が降らなかったら
今頃一緒に笑っていたのかな
大阪の話で盛り上がって
酔っぱらったわたしは気が大きくなって
大阪へ遊びに行く予定まで
決めたかもしれないね
カーテンを開けると
まだ
雪が降っていた
ねぇ
どうしてこんな日にきみは降るのかな
だって
寂しさを感じられたでしょ
雪がそう答えた気がした
たまには寂しくないと
みんなありがとうを忘れちゃう
毎日幸せばかりだったら
幸せってことを忘れちゃう
だから
たまには
寂しくてもいいんだ
カーテンをゆっくり閉めて
あたたかいお茶を飲んだら
そろそろ眠ろう
そうね
そうね
たまには
寂しくたっていいんだ
今度は
いつ逢えるかな
今日
寂しくなった分だけ
きっとその日は
あったかくなる
味わうHAPPY 2
わたしが二日酔いの次の日に
今度はあなたが二日酔いって
笑っちゃってごめんね
二日酔いのあなた
可愛いんだもん
お昼を一緒に食べようって約束したけど
食欲あんまり無さそうですね
あ
あれなら食べられるかも
あそこの玉子かけご飯
あなたの言葉に車を走らせた
どんどん道が広くなる
どんどん空が青くなる
窓を開けたら
海風の匂いがしてきた
いつも混んでるお店なのに
平日だからすぐ座れて
親子丼とか
ハンバーガーとか
他のメニューには目もくれずに
二人で玉子かけご飯
あったかいご飯と玉子が三個ずつ
いっぱいかき混ぜるあなたと
あんまり混ぜないわたし
二人で
いただきまーす
うん
うん
美味しいねー
違うお醤油を使ったから
取り替えっこしてひと口ずつ
うん
うん
美味しいねー
あなたの肩越しに海が光ってる
空にはひこうき雲
もう冬なのに
これから春になるみたいないいお天気
わたしの隣の席に座ってる赤ちゃんが
声あげて笑った
ほっぺには玉子かけご飯が
一粒ついてる
見て見て
かわいいね
あなたに言うと
あなたのほっぺにも
玉子かけご飯が一粒
ついてるわけ
ないよねー
そんな想像してニヤニヤしてる
今日のわたしはとっても元気
味わうHAPPY
今日は
白老で玉子かけご飯
ごちそうさまでした
味わうHAPPY 1
朝からわたしは二日酔い
でも旅に出た
とにかく何か食べなきゃ
具合い悪いまんまだけど
たどり着いた大きなスーパーの
レストラン街は人混みで
それだけでもう無理
スーパーを出てトボトボ歩いた
寒いなぁ
ちょっと先にお蕎麦やさんの看板
冷たい風に体を縮めながら
一歩一歩重たい足取りだけど
お蕎麦なら食べられそう…
扉を開けるとお昼時だから満員
すぐに店員さんが
何名さま?と聞いてくれる
一人です
答えながらカウンターの端を見つめると
サラリーマン風の男の人でいっぱい
あそこでお蕎麦を食べるのは嫌だな
と思った
小上がりへどうぞ
店員さんは襖を開けて
宴会に使う広い部屋に案内してくれた
だあれもいない
え?
ここ使っていいんですか?
お好きな席使ってください
ホッとして
のろのろとブーツを脱いで
マフラーを外して座った
あったかぁい
窓の外にチラチラ雪が降り始めてる
いらっしゃいませ
ありがとうございました
混んでいるお店のざわめきが聞こえてくる
でも誰もこの部屋には入ってこない
少ししてから
おしぼりとお水を店員さんが
持ってきてくれた
注文して
お水をひと口飲むと
また胸がムカムカした
飲み過ぎたもんなぁ
ぼんやり昨日のことを思い出す
一杯目のビールが美味しくて
話がはずんで
レモンサワー飲んで
シークワーサーサワーにして
またビールに戻して
あ
そのあたりから酔っ払って
あれでやめとけば良かったのに
もう一軒行っちゃったんだっけ
胸をさすりながら
そんなこと考えていたら
あったかいお蕎麦が運ばれてきた
おいしそ
ひと口おつゆを飲んでみた
ちょっと濃いめで
あーこれなら大丈夫かも
いつもならササッと食べてしまう
お蕎麦だけれど
ゆっくりゆっくり食べた
窓の外の雪と同じペースで
ゆっくりゆっくり食べた
体があったまってきて
うっすら汗をかく頃には
二日酔いが抜けてきて
昨日の後悔も抜けてきて
これから旅する街のことを思って
ふんわり幸せになる
きっとこのお店に来たくて
ここのお蕎麦を食べたくて
わたしは昨日飲み過ぎて
二日酔いになったのかもね
そんな都合の良いことを考えて
ひとりでニッコリしてみる
味わうHAPPY
今日は
山かけ蕎麦
ごちそうさまでした
わたしの見たい世界を選ぼう
たとえばね
今日わたしはハンバーグを食べたの
大好きな人と
最初はパスタを食べに行こうと思ってた
あそこのペペロンチーノは
あなたが大好きだから
でもわたし
ペペロンチーノは今日はちょっと無理かな
うーん…カレーがいいかな
それともいつもなら無視する日替りランチ?
そんなことブツブツ車の中で喋っていたら
ほら、ちがうお店のハンバーグはどーお?
あなたが言った
でも
あそこのペペロンチーノ食べたいんでしょ
心で呟いたけれど
こういう時は頑固
もうわたしが食べたくない事に気づいてる
仕方ないから素直になる
じゃあハンバーグハンバーグ
ホントは久しぶりに
あのお店のハンバーグ食べたかったんだーっ
精一杯明るくするけれど
ちょっと胸が痛んだりする
だって
あなたの笑顔を見られるならそれで良かったの
美味しそうにペペロンチーノ
食べてるあなたを見つめられれば
わたしは満足だったの
そんなわたしとおんなじように
わたしの美味しそうな顔を
あなたも見たいんだなぁ
って思ったから
小さな胸の痛みは押し込めて
ハンバーグ食べに行きましょう
レストランに着いたら
焼き方が変わってて
トッピングも変わってて
店員さんも無愛想で
わたし達の知ってるお店じゃなくなっていた
狭い席は嫌だったから
テラスの席が開くまで待つことにした
店員さんは軽く溜息をついて
今テラス片付けますから
と ぶっきらぼうに言った
ペペロンチーノにしてたら
こんな思いしなくてよかったのかも
あなたに悪くて
なんだかシュンとした
やっと片付けてもらったテラスで
スープとサラダを食べ始めたけど
あなたはなんにも喋らない
ぼんやり見えるテレビの画面を
あなたに説明してみたけれど
興味ないみたいで
テレビの方に振り返りもしない
スープもサラダもぬるくて
急に泣きたくなる
前はもっと熱くて
もっと冷たかったじゃない
もっと店員さんも笑顔だったじゃない
もっと…
そんなこと考えているうちに
ハンバーグがテーブルに運ばれてきた
自分の分だけフォークとナイフを取って
あなたは食べ始める
いつもなら
わたしに先に取ってくれるのに
美味しいね
ちょっと胡椒がいつもより効いてるね
そんな言葉も届いてないみたい
なんにも喋らないで
ふたりでハンバーグを食べた
喋らないから気まずくて
先に食べ終わりそう
ひと口残ったご飯をあなたに
あげようとしたら
あなたがハンバーグをひとかけら くれた
そうじゃないんだ
そうじゃないんだ
でも言えなくて
もらったひとかけらのハンバーグと
残りのご飯を無理矢理口に押し込んだ
テレビには
見たかった映画の予告編が映ってる
予告編の話も言えなくて
なんにも言えなくて
ペペロンチーノにしていたら
もっと二人お喋りだったかな
ふぅーっと息を吐いて
食べ終わったあなたは
おなか空いてたんだなあ
ってポツンと言った
え?
そんなにおなか空いてたの?
うん
それに風邪もひいてるみたいで
ちょっとだるくて
風邪薬飲んでおこうかな
ニコニコしながら
バッグから風邪薬を出して
店員さんにお水を頼んでる
さっきまで不機嫌に見えた店員さんは
すぐにお水を運んできてくれた
わたしが今まで見てた世界は
いったい何だったのかしら
あなたはペペロンチーノ食べたいのに
わたしのハンバーグに合わせてくれて
なのにお店はいろいろ変わってて
わたしは申し訳なくて
だから
あなたも無口になってて
だから
わたしもギクシャクしてて
そんなの
ぜんぶ
勝手に思い込んでただけだった
あなたはお腹空いてたから無口で
店員さんは忙しい時間だったから無愛想で
それだけだった
なんにもなんにも
わたしのせいじゃなかったんだ
またテレビには映画の予告編が流れてる
これこれ
この映画見たいから一緒に行こうね
今度は振り返ってテレビを見たあなたが
優しく優しく
頷いてくれた
世界は光と影でできている
けれど
見たい世界は
きっと
自分で選べるのです