2018 夏
あんまり調子が良くないなぁ
体も心も
いろんなところが行き詰まってる気がする
今年の夏
少しくらい怠けましょう
ふらり
と
旅に出た
木漏れ日を浴びて
一日に一本しか走らない電車が
行ったばかりの駅に着いて
灯台で風に吹かれて
ずうっと
海を見ながら
旅した
曇り空だけど綺麗
知らない街はみんな綺麗だ
新しい空気がわたしを包んで
勝手に幸せになる
いつもならお酒ばかりの旅なのに
美味しい珈琲を飲んだ
いつもなら立ち止まらない
小さな花畑で
もんしろ蝶をじっと見ていた
若い時には急いでた旅が
だんだんゆっくりになって
今年は時間が止まったみたいに
ひとつひとつの景色が愛おしい
来年はもっと愛しくなるのかな
さ来年はどうなるのかな
わたし
年をとった…
こんなに綺麗な風景の中で
どんなに年を重ねても
変わらない少女のようなわたしを見たくて
また
旅に出よう
どんなにゆっくり歩くようになっても
また
変わらない景色は
変わっていくわたしを
迎えてくれる
寂しくて優しい夕暮れ
昨日
息子が家を出ていった
ひとり暮しするの
やっとね
ちょっと長くいすぎたよね
ううん
一回転勤になったのよ
三年前だったかなぁ
転勤先でいろいろあって
あの時は一週間で帰ってきたの
わたしが寂しさを感じる時間もなかったなぁ
でもね
そのあと
あの子
調子が悪くなって
会社に行けなくなったの
はじめて見た息子の挫折だった
わたしはどんなに働いてもいいから
あの子がまた笑ってくれさえすればいいから
一生わたしが支えることになってもいいから
息子と生きていこうと決めた
そして
冷たい雪が溶ける頃
息子は自分の力で
新しい仕事を探して働き始めた
まだ早いよ
無理しないでよ
しかめっ面しながらそう言うわたしに
大丈夫だから
ボソッと答えて
毎日ちゃんと仕事へ出かけた
わたしは ただ お弁当を作って
シャツを洗ってあげて
あんまり代わり映えしない夕食を作って
息子と暮らした
春が夏に
夏が秋に
息子はゲームをしたり
友達と出かけたり
いつのまにか息子の部屋から
笑い声が響くようになり
また冬が来て春になって三年
昨日
息子は家を出ていった
前と違って
友達がいっぱい来て
楽しそうに引っ越しの荷物を運んで
じゃあね
って
出ていった
わたしの子育てはもうおしまい
あの子は今度こそ大丈夫
前より近いし
いつでも逢えるし
そう思っていたはずなのに
夕暮れになって
ご飯仕度しようとして
あ
息子は帰ってこないんだ と気づく
それならお昼ごはんの残りでいいや
窓辺に座ってぼんやりぼんやり
外を眺める
涼しい風がわたしの髪を揺らして
空が
綺麗
こんな時間に
こんな風に
外を眺めることなんてなかった
いつも
息子のご飯仕度で
野菜を切ったりお肉を焼いたり
こんな風に
風を感じることなんて
家にいる時はなかったのに
これからずうっと
夕暮れを見つめていいんだ
寂しいけれど
優しい夕暮れ
一人ぽっちなのに
あたたかい夕暮れ
息子は今日
何を食べるのかな…
一緒に生きてくれて
ありがとう
離れても
きみのお母さんは
世界に
わたし一人です
いちばん満足することは何ですか
いま
いちばん満足することは何ですか
まだ眠たい?
それなら眠りましょう
その体勢でいい?
シーツは洗い立てですか
タオルケットはよい香りがしますか
枕の高さは?
窓から入ってくる光は眩しすぎませんか
いま
いちばん満足することは何ですか
おながが空いてる?
何が食べたいですか
自分で作りますか
誰かに作ってもらいますか
スープの温度はちょうど良いですか
お気に入りの食器ですか
音楽をかけた方がいいですか
それとも
誰かとおしゃべりしながら食べますか
こんな風に
いまいちばん満足することを
細やかに選んでいく
たとえ
その通りにできなくても
自分はこれがしたいんだ
これを望んでいたんだと
わかってあげる
自分が大好きな世界を
一瞬一瞬ちゃんと選んであげる
たとえ今の現実はそうできなくても
がっかりしないで
自分の心地好さに
ひたってみて
面白いね
それだけで
明日見る世界は
変わっていくのです
どんな瞬間が
お望みですか
恋
あの人が何を好きなのかは
あの人の自由
わたしが何を好きなのかは
わたしの自由
ふたりが
お互いのことをどんなに好きでも
好きなものを束縛する権利はないよね
でも
束縛する権利があるかも
って
勘違いすることが
恋
なの
なんにもない日
久しぶりの
なんにもない日
お休みでも必ず出かける日が
続いていたから
本当にお久しぶりの
なんにもない一日
だけどラインがたくさん鳴って
いつにしますか?
いつなら行けますか?
いつなら会えますか?
・・・
今日なら
スマホをそう打とうとした指を止めた
今日は久しぶりの
なんにもない日
なんにもない日を楽しもう
思いきりお昼寝して
思いきりゴロゴロして
思いきりだらしないわたしになろう
明日なら行けます
来週なら会えます
いくつかの入ってきた予定を振り分けて
今日はそのまま
なんにもない日のまま
わたしは
わたしのために生きるんだ
やらなきゃいけない事のためではなく
やるべき事のためではなく
わたしのためだけに生きるんだ
ほら
青空
先を急いでいる時には
見えない青空が
窓の外に拡がっている
またラインが鳴ったけど
電源をそぅっと切って
今日は
わたしのためだけの
なんにもない日
雨の緑陰
夏の始まりの旅は
雨
雨だから
緑が鮮やかだった
雨だから
あなたと一つの傘を差して歩いた
雨だから
あなたに聞こえないように
好きだよ
って
呟いてみた
雨の音に消されるわたしの声
青空の下で笑いあえる旅も
幸せだけれど
こんな雨の旅だから
あなたがもっと愛しくなる
あなたのことがこんなに愛しいわたしが
もっと大切になる
雨の緑陰
いつまでも
あなたとこの雨の中を歩いていたい
雨が上がっても
ひとつの傘を差して
よりそって
歩こう
どーなってもいい
そんなに
守らなきゃいけないものなんてない
こうすれば上手くいく
それをしないから上手くいかない
そんな風に思い込んでるのは
ちっぽけな自分だけの世界
どーなってもいいように
世界は
出来ている
だから
今日
大好きな人からメールが返ってこなくても
仕事がうまくいかなくても
信号が全部 赤になっても
雨がパラパラ降りだしてきても
あなたは
大丈夫
信じてみよう
この世界で生かされている
自分の素晴しさを
思いだそう
もう目が覚めなくてもいいと
思いながら眠った夜にも
必ず朝が来る奇跡を
どうなっても
幸せになれるのです
わたし達
さぁ
力を抜いて